特別養子縁組に進む前に解消したい7個の不安(後編)
特別養子縁組という選択は人生に大きな変化をもたらす、大きな決心の一つ!
特別養子縁組で当時10か月の娘を迎えたさきです。私もそうでした。たくさんの不安、どうすすめていけばいいのか、と考えることが多すぎて整理ができなかった。
そこで、今回は特別養子縁組という選択をする前に解消できる不安7個をご紹介したいなと思います。
結論はこれ!
- 特別養子縁組制度は子どものための制度
- 血のつながらない子どもを愛せるか
- 子どもに障害や病気があっても育てる覚悟
- 子を育てる上で実子と違う点
- 配偶者や両親・親族からの反対
- 実親の気持ちが変わったらどうしよう、返すの?
- 特別養子縁組に必要なお金
特別養子縁組里親への登録の具体的な要件・条件については以下の記事を参考にしてください。
この記事では後半の4つの各項目の詳細をそれぞれ見てみましょう。
前半3個についてはぜひこちらをチェック!
4. 子どもを育てる上で実子と異なる点
実際、育児を始めると日々の悩みのほとんどは「夜寝れない」「ごはん食べてくれない」「お風呂嫌がる」「少し成長がゆっくりな気がする」などなど、実子と大差がなさそうです。
当然最も違う点は血がつながっていないこと。
ではそれ以外にどんなことがあるのでしょうか?
例えば、市役所や保育園、病院では養子であることを伝えないといけないですが、子育てセンター、旦那さんの職場、ご近所さんには必ずしも伝えなくてもいいので、どこまで伝えるのか悩む方もいるようです。
ちなみに、委託と養子縁組成立年齢によっては保育園にもお伝えしないという方もいらっしゃいました。
それ以外の大きな悩みとなりそうなのは具体的に下記の3点かと思いますので、まとめてみました。
- 試し行動
- 真実告知
- 思春期
試し行動
試し行動とは、端的に言うと子どもが養親を困らせるような行動をとることです。
でもこれは養親が自分のことをどの程度受け止めてくれるのか、本当に愛してくれる人かを試す行動とされていて、試し行動と呼ばれています。
その行動には個人差があり、また養親に出会う年齢によっても異なるとされています。
乳幼児期は過食・拒食・極端な偏食、暴言を吐く・叩いたり蹴ったりするなどがあげられます。
事前にわかっていれば、慌てることなく対処できるのかな?と思います。
また、試し行動には必ず終わりが来ます。それまではすべてを受け入れて、我慢し、辛抱強く愛していることを言葉や行動で子どもに示し続けてあげる必要があります。
それによって、本来生まれた瞬間から親と形成するはずであった愛着関係を、取り戻すかのように形成していくことになります。
試し行動については別途詳しく解説します。
主には
①見せかけの時期・・・とてもいい子ちゃんな子どもを演じる
②試し行動・・・愛を確かめるために問題行動を起こす
③赤ちゃん返り・・・1日中ではありませんが場面場面で実年齢よりも幼い行動を要求します。(ただし、これは子どもの年齢にもよります)
④本来の性格を発揮・・・本来の素直な性格を出してくれる時期
に分かれて子どもが急ピッチで赤ちゃんから委託時の月齢まで愛着を形成しながら成長していきます。
この時、ひどい試し行動でかわいいと思えなくなってしまうこともあるようですが、それでも良いそうです。子どもは一度以上の離別や環境変化を余儀なくされていてつらい思いをしてきている上に、親になる人を信頼していいか試さなくてはいけない。自分たちよりつらい思いをしているのだと理解してあげることが大切かもしれません。
知り合いの養親さん宅ではご飯を毎度全部投げられてしまう、壁に塗られてしまう、旦那さんには一切触らせず、お母さんに対して赤ちゃん返りしてしまうなど、子どもによって本当に様々でした。
決して無理はしすぎず、必要に応じて周囲や児童相談所や市の支援を受けながら愛着を形成していきたいですね。
真実告知
真実告知とは、子どもに育ての親(養親)と血がつながらないことを伝えることです。
つまりお母さん(養親さん)からは産まれていないことや産んでくれた人はほかにいることを子どもに伝えていくことです。
特に物心がつく前に子どもを迎えた場合は、伝えなくてもいいのでは?と思ってしまいがちですが、必須です。
子どもには当然、自分のルーツを知る権利があります。
いつどう伝えるか、明確にルール化されてはおらず、難しいですし、各所の児童相談所や民間団体ごとに取り決めが違いますが、一般的には小学生に上がる前や物心つき始めるころから少しずつというのが一般的です。
ことばが理解できないうちから話して聞かせ、改まって伝えるよりも日々の生活のなかで子どもからの問いに答える形で伝えるといいとされています。
実は、真実告知は1回で終わらず、子どもが思春期になるまでや成人するまで少しづつ、子どもの成長や性格に合わせて行います。日常会話の一部になるようなイメージで進めていきます。
思春期
当然、子どもにより個人差は大きいですが、実子であっても関係が難しくなってしまう時期ですよね。
養子の場合はそれに加えて「養子であること」が自分のアイデンティティーに影響し、親子関係がより難しくなることがあります。
そのためにも幼少期からの真実告知では、包み隠さず知っていることを伝えたり、子どもが知りたがっていることを一緒に調べたりと、誤魔化さずに誠心誠意伝え続ける必要があるかもしれません。
特に思春期からの真実告知はNGです。大きくなってから事実を知ってしまった場合や親以外から知らされた場合、大きくなってから真実告知をした場合、親に裏切られた・これまでの生活自体が嘘、虚構であるかのように受け取られてしまうことがあるようです。
5.配偶者や両親・親族からの反対
配偶者の反対
夫婦の価値観は合わせておきましょう!
前編でも触れていますが、基本は夫婦でよく話し合い、自分たちの軸や方向性を合わせておく必要があります。これは、特別養子縁組が夫婦単位で行われるもので要件にもある通り「仲睦まじい夫婦であること」が条件だからです。
「あの人は反対してますが、育児は私がするので、養子が欲しいです」は絶対にNGです。根気がいるかもしれませんがお互いの思い、その理由をよく話し合って妥協点を見つけるなり、お互いが納得するまで議論して共通認識を持っておくことが必要です。
しかし!両親や親族の反対はこの限りではありません。
両親や親族からの反対
面談や研修中、最終面談などで両親の育児への協力が求められそうか、そもそも特別養子縁組に賛成しているか、親族はどうかなどが聞かれます。
これは、実際養子縁組したものの、養親の両親からつらく当たられてしまい、子どもが傷つかないように、そして養親たちが親族内で孤立しないようにという理由で、児童相談所や民間団体さんが心配してくれているからと私は認識しています。
当然両親の賛成および育児協力が得られそうな環境であることは理想的だと思います。しかし、必ずしも必要ではありません。
現に私の夫の両親は当初反対していました。そしてそのことを正直に児童相談所にも伝えていました。
その際に言われたことは、「では、どうされる予定ですか?」でした。
この時、私たちは研修が進む中、これからも都度伝えていくつもりだし、反対している理由も詳しく聞いて解決策を模索するつもりですと伝えました。
今後の方針や、どうしても賛同が得られなかった場合に子どもに不利益が生じないように自分たちがどうするつもりか、どんな対策を考えているのかをしっかりと団体に伝えることができれば、必ずしも賛同を得る必要はなさそうです。
研修中のある養護施設さんで、「親族から強い反対があった場合どうしますか?」と質問を受けました。とても以外でしたが親族という小さなコミュニティーは今後子どもがかかわる広い社会のいい勉強になると答えたことが印象として残っていたので紹介します。
仮に反対されたとしても、世の中にはいろいろな考えの人がいること、私たちの関係に異議を唱える人もたくさんいること、そしてそれでも変わらず私たち両親にとって迎えた子どもがかけがえのない存在であり、愛していることを伝える逆にいい機会になるはずだと答えました。
甘い、詭弁だとおっしゃる方もいるでしょうが、子どもがこれまで背負ってきた歴史を考えると、決していいものではないのは確かです。
だからこそ、それをポジティブにとらえていく方法を、または乗り越えていく方法を伝えるのも両親の役割であると私は考えています。そのためにも親族の反対ぐらいは、押し切ったり説得したり、衝突したり色んな方法があるとは思いますが、乗り越えられるだろうという自信と覚悟ぐらいはないといけないなと思います。
6. 実親の気持ちが変わったらどうするの?返すの?
子どもの産みの親が、心変わりしてやはり自分で育てたいまたは養子縁組はさせないと考えた場合、どうなるでしょうか?
現時点の日本では、すでにその子と生活している試験養育期間であっても、実親の翻意によって、子どもとの別れが余儀なくされます。
有名なのは2020年の朝日新聞に掲載された記事ではないでしょうか?
養親にとってはとても悲しい出来事で、自分の子どもがそうだったらと思うと本当にいたたまれません。
現在法律が改正され裁判は2段階とされ、1段階目の「子どもが特別養子されるべきか」という特別養子適格という裁判があります。その際の実親さんの意向確認が取れたのち2週間後以降は実親さんが翻意できなくなりました。
これまでに比べると翻意が認められる時期が短くなっており、養親にとってはうれしい改正であることは間違いありません。実親さんにとっては産後のつらい状況の中、最終決断を早期に迫られてしまうためつらいことかとは思います。
ちなみに、1段階目の申請がいつなのか、成立がいつなのかという明記がありません。
そのため、民間団体の場合養親が第1と第2の裁判を同時申請します。児童相談所の場合も実際には、先にマッチングや委託が開始される場合が多く、私たちも法改正後のマッチングでしたが、1段階目の審判が下りるころにはすでに子どもと生活し始めて約半年が経過していました。
そのため、法改正後の現在でも悲しいですが、実親さんの翻意により子どもおよび養親が不必要に傷ついてしまう事態は起こりえます。
しかし、児童相談所や民間団体さんの実親さんへの手厚い事前の意向確認や生活状況の確認、必要な支援などによって、いったん養子縁組予定としてマッチングを受けた子どもが取り消される事例は非常に少なく1%もないようです。
7.特別養子縁組に必要なお金
費用は児童相談所から委託を受けるか、民間団体から受けるかで大きく異なります。
費用面では圧倒的に児童相談所から迎えた方が負担が少ないです。しかし、地域によって差はあるものの、多くの地域で児童相談所からの特別養子縁組前提の委託率は非常に低いです。また、委託される子どもの月齢が0か月はほとんどないに等しく、未委託の待機里親が非常に多いのが現状です。
そのため、児童相談所で認定され、委託待ちで数年たっても連絡がなく、民間に切り替える方も少なからずいます。単純にお金の問題だけであれば児童相談所がという選択になると思いますが、実際は実現可能性や時間の問題があると思いますので何を優先するのかをよく考えてから民間団体を選択するのもよいかと存じます。
ただ、費用が非常に高額ですのでよく調べて、自分たちで団体とよく話し合って、自分たちと考え方が近く、負担する費用に見合うと納得できる団体を選ぶことが大切です。
児童相談所の場合
- 研修・登録時は数千円の研修費
- 交通費
- 健康診断の費用(1年以内に受けている場合は不要)
- 住民票などの取得費
上記のような実費のみです。
また、子どもを迎え入れる際も費用は発生しません。
なお、逆に特別養子縁組が成立するまで手厚い金銭的援助があります。
- 都道府県により金額が多少前後しますが、委託費(子ども生活費)として約5万円が支給
- 収入などに関わらず受診券による医療費無料
- 収入などに関わらず保育園の費用や給食費負担
民間団体の場合
団体によって、まちまちで数万円~数百万円と広い幅があります。
これは、各団体がどこまでサポートをしているかなどによって大きく分かれるためです。
あんさん協の提携病院さんの場合は、ほとんど子どもに関わる実費のみのため、比較的安いです。しかし、審査などが厳しく委託までのハードルは高いようです。
内訳の一例はこちら
- 養育希望者対応費:0~最大40万円
- 実親および養子対応費(出産や委託までの子どもの養育費):0~8万円
- 民間機関の人件費、事務費等の運営費:0~120万円
平均は約80万円程度
内訳は、委託登録までで10数万円、委託後裁判までで60万円程度
支給されるお金は?
児童相談所からとは異なり、委託時の毎月の委託費用は支払われません、
しかし、東京都は民間斡旋団体利用者に対しても強い支援をしており、都道府県によっては1世帯あたり民間団体に手数料を支払ったのちに補助金約40万円を上限として支給されます。
参考:東京都福祉保健局「令和4年度 養子縁組民間あっせん機関助成事業(養親希望者手数料負担軽減事業)について」
後編まとめ
さて後編では委託後のお話や周囲の人々、お金のお話をしました。いかがでしたでしょうか?漠然とした不安が明確化し、かつ少しは解消できましたでしょうか?
- 子を育てる上で実子と違う点
- 配偶者や両親・親族からの反対
- 実親の気持ちが変わったらどうしよう、返すの?
- 特別養子縁組に必要なお金
前編では実際の自分たちの特別養子縁組に進むための軸に関するような下記3点を解説しましたので、良ければこちらもぜひチェックしてください!
- 特別養子縁組制度は子どものための制度
- 血のつながらない子どもを愛せるか
- 子どもに障害や病気があっても育てる覚悟